コラム 認知症って?

BPSD って何?

 BPSDは「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったもので、日本語では「認知症の行動と心理状態」と訳されます。

 認知症はありふれた病気となり、65歳以上の高齢者の認知症有症率は15%で、加齢と共に増加してゆきます。更に、以前のコラムでご説明しました認知症予備群の軽度認知機能障害(MCI)を含めると、癌などと同じく、避けて通れない身近な病気となりました。
 認知症の中核症状は、記憶障害、見当識障害、実行機能障害等があり、徐々に進行して、日々の生活に支障がみられ、終には介護状態となってゆきますが、その過程で認知症患者が示す言動に、介護する上で色々と問題になることがあります。これらは周辺症状と言われています。幻覚、妄想、暴言・暴行、徘徊、不潔行為、意欲低下等で、これらの言動(周辺症状)は、介護する側からみますと大きな問題で「問題行動」と呼ばれていましたが、最近では、認知症の方にとってこれらの行動は、意味のある行動ではないか、介護する側からの視点ではなく、認知症の方の立場に立って、これらの行動には何らかの原因があり、その原因によって異常な行動が出現するという視点に立って対応すべきではないかと考えられ、問題行動から周辺症状、更にBPSD(行動・心理状態)として、認知症の中核症状に様々な要因(不安感・焦燥感、ストレス、身体症状、環境及び不適切なケア等)が加わって出現するのが行動・心理症状と言われています。
 行動・心理状態を理解する上で大切な事は、認知症の方の言動は、本人なりの目的に沿った行動であり、理由があるのだという理解です。
 加藤伸司氏はその著書の中で、「これまで私たちは、BPSDというものを厄介な行動というように思ってきましたが、実はそうではなく、認知症の方の示す色々な行動は、私たちに何かを伝えようとしているメッセージである。」と述べています。この難解なBPSDに対応する原因は認知症の方そのものの中に潜んでいるのです。
 ケアを進めてゆくには、その方の生い立ち、現時点での身体状態、住んでいる環境、周りの人々の対応など、医療、福祉面での多方面からのアプローチによって、かつ、認知症の方の尊厳を守り、その人となりを認めることによって成されてゆくのだと思います。 認知症があっても、生活に支障があっても、認知症の方が安心・安全であり、くつろぎがあり、周りの人々との関わり(交流)があり、その能力において何らかの役割があれば、安らぎを得、BPSDのない日々を送ることができるのだと思います。
 この考え方は、パーソン・センタード・ケア(Person Centerd Care)の理念に繋がるものであります。

パーソン・センタード・ケア(Person Centerd Care)について
 1990年頃、英国のトム・キッドウッド (Tom Kitwood 1937-1998) が認知症ケアのあるべき姿として示した理念ですが、その人らしさ(パーソンフッド) を大切にしたケアの概念です。認知症をもつ方の周囲の人々や社会との関わりを持ち、人として受け入れられ、尊重されていると本人が実感できるように共に行ってゆく、その方(認知症)を中心としたケアであります。

 認知症の方の心理的ニーズは次の5つがあります。
1. 絆や繋がりを保つこと、互いを育みあい、信頼し、関わり合うこと。
・・・結びつき
2. 思いやりや親しみを感じる。相手に対する慈しみや親しみを持って、相手の気持ちを和らげるように接する。
・・・慰め(くつろぎ)
3. 認知症になったとしても、他の人々があなたの事を知っていて、今あるあなたをあるがままに尊重する。
・・・自分であること
4. 認知症のある方にとって意味のあるやり方で活動に従事すること、必要とされる支援を共に行うこと。
・・・携わること
5. 認知症のある方が、自分はグループの一員であり、歓迎され、受容されていると感じることが出来る。
・・・共にいること

 このニーズをいかにして満たしてゆくか、それには認知症をもつ方の独自性を尊重し、人としての価値を認め、人間関係を大切にする。そして、認知症を持つ方の視点に立って理解をし、相互に支えあう社会生活を提供することが重要だと思います。
 この考え方の基本となるものは、すべての人間には絶対的価値がある、すなわち、脳が侵されて様々な認知的能力を喪失しても、認知症を持つ方の人間性は失われず、その根本的価値は変わらないという倫理に基づいています。
 そして、認知症の症状は、脳の障害だけでなく、身体的健康、個人の生活歴、性格、その方を取り巻く社会的環境など、様々な要因が、認知症を持つ方の行動や感情に影響を与えていると考えます。それ故、BPSDにおけるケアは、これらの要因を紐解いて、分析し解析して、この行動がいかなる原因によるものかを明らかにして、ケアすることによって治療を進めてゆくことができるようになります。
 今、色々なケアの方法が発表されています。パーソン・センタード・ケアは、認知症のケアの根本的概念として、治療・介護面に限らず、認知症の方のいらっしゃるご家族にとっても重要な考え方であり、家族の中では、この理念に基づいたケアを行っている方々もいらっしゃいます。

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